内藤ルネ 少女たちのカリスマ・アーティスト

河出書房新社  2002.6.30初版

この方が『薔薇族』の表紙を担当されていた事を思い出したので手に取りました。
いや、手にとって見て愕きました。この方については一時代を築いたアーティスト
と言う認識だけを持っていたのですが、優れたデザイナーでも在ったのですね。
一例を取ればステンシール。まさかこの方が関っているとは露とも知りません
でした。多才振りと色遣いに酔ってみて下さい。(2003.7.1)

Knife Age 明るいトーサク漫画/胡桃ちの

『DEEP』 ミリオン出版:刊行/季刊誌 
VOL.2(1993.12.10)〜VOL.5(1994.9.10)掲載  単行本収録未確認

飛び道具を出させて戴きました。資料として集めていた雑誌に掲載されていた
やおいを題材にした四コマ漫画のご紹介です。
単行本未収録らしいのは題材の問題もあるでしょうが多分に長さの問題
でしょうね。一回掲載につき4ページ7本立て…つくづく雑誌休刊が
惜しいところです。内容としてはライトな学園やおい。カップリングは
ほぼ王道の生徒会会長&副会長。絆は堅いがベタベタでは無い…眠らせるには
一寸惜しいかなと言う作品です。  (2003.8.4)

蒼き狼たちの伝説/相沢たつき  

『manga純一』 光彩書房:刊行/隔月刊
1996年6月号(1996.6.1)〜1996年12月号(1996.12.1)掲載  未単行本化

やおい事典にて取り上げていた懸案の作品です。
ビデオ作品のイメージがかなり残っている頭で本作を観るのは
複雑な気分ですね。イメージの一欠片も無いならないで感想を
述べるのは楽なのですが、アレンジを加えつつもビデオ作品の
ある局面を伝えようと言う作者の眉間の皺の寄せ具合が感じられる
だけに言葉に困ります。独立した作品として知っていたなら、
まあ普通に萌えたでしょう。
只今だに気に掛かるのはこの作品が単行本化される気配がそよとして
感じられない…ビデオ作品の存在が、どうしてもハードルになって
いるのでしょうか?  (2003.8.4)

FIRST CONTACT 銀河帝国の滅亡・外伝  
蒼き狼たちの伝説/湯島ショーヘイ

『ブレス』 ヒカリコーポレーション/月刊  VOL.16(1997.1.17)掲載

これも相沢たつき作品と同じくやおい事典懸案の作品です。
この作品では大胆にも『純一』で4回連載で再現されたビデオ作品の内容を
一回掲載22頁で再現しようとしています。のみならず、物語の展開自体にも
アレンジが施されて居る様です。作風の違い、だけでは無いのでしょうね。
物語がこれから展開する様な描かれ方をしていますが、それは果たして
作品にとって幸せだったのか、不幸だったのか…。
              (2003.8.4)

幻想絵画館/倉橋由美子

文藝春秋  1991.9.30初版

既製絵画と旧仮名遣いで展開される物語のセッション。おいそれとは文庫化に
出来ない内容です。既製絵画が添えられた物語に拠って新たな命を得て読者を
惑わせるのですから。
主人公の『自分で自分を教育する』美少年は『ポポイ』では彗星の様な脇役を
演じていたのですが、その時は正直彼を好きになれませんでした。余りに完成
され過ぎていましたから。
一読して天才の内面について考えるも良し、美少年を育てる感覚に酔うも良し。
愉しみ様は幾らでもあろうか、と。  (2003.8.29)

よもつひらさか往還/倉橋由美子

講談社  2002.3.20初版

恐らく、小説家倉橋由美子の最晩年の作品と言えるものでありましょう。
エッセイで宣言した如く旧仮名遣いの遵守を放棄されていますし。だからと
言って物語の紡ぎ方に狂いは見られぬので唯感服するばかりですが。
この連作集でも主人公は『ポポイ』に出てきた彼です。但し、『幻想絵画
館』の頃より少し大人になった…『ポポイ』で描かれる日々のほんの少し前、
といった所でしょうか。疲れを癒す一杯のカクテルの存在もまた彼の成長を
伺わせます。いっそ物語に溶け込めれば良いのですが。
                (2003.8.29)

やおい幻論 『やおい』から見えたもの/榊原史保美

夏目書房 1998.6.20初版

やおいの人、と言うより葡萄瓜にとっては耽美の人と認識されている方の
『やおい』総括の書です。当事者の書いた論としては優れている、と言って
良いでしょう。読んでいてかなり苦い後味が残りますけどね。
読み手にとってのやおいが果たして幻なのか其れとも何か意味のある事なのか。
それは読み手一人一人のやおいに向き合う姿勢で決まる様な気がします。
そのきっかけを考えさせてくれる様な一冊です。地雷にもなりかねない
でしょうが。   (2003.9.6)

魔法学園初等科 ファンタジーガイドブック

コライユ出版  2002.7.5初版

眼鏡をかけた魔法使い見習少年を主人公にした児童文学作品ジャンルの
アンソロジーです。彼の額には勿論稲妻を象った痣があります。
……アンソロジーの存在自体は良いんですけどね。
只言い訳口上を付けて出版すれば良いものでは無いだろうと思って溜息を
ついただけです。内容の手応えが良いだけにこの一点だけが曇りに感じられ
るんですよ。   (2003.9.6)

小説月光 第三号

東京デカド社  1986.1.30発行

いきなりですが、ALLANを皮切りに様々な変遷を遂げた雑誌の一過程です。
なんと言いますか非常に良い混沌振りですね。百合小説に宝塚特集に耽美
小説に帝銀事件ですか…。又記事のどれもが相当な破壊力を持っているので
おちおち気を抜いて読み流せない。確かにこれは好きな人は好きな世界ですね。
やおいと出会った頃にこの世界を味わっていたら、むしろこちらに引き摺ら
れて行ったかも知れません…。  (2003.9.6)

艶色説話絵巻 浮世絵グラフィック6/福田和彦  

KKベストセラーズ  1992.5.5初版

日本美術に於ける絵巻物の画集です。但しタイトルにある様に成人向けの
絵巻物を収録し、尚且つ修正は最低限に留めてあります。
『稚児草子』フルカラー全文収録の為、紹介させて戴くに至りました。
解題によるとこの草子に描かれているのは10世紀・平安初期の寺院内での
様子であるとの事。美術としても非常に良い部類では無いかと思われます。
稚児とは一体どんな存在であったのか、とページを捲りつつ思いを馳せるも
又一興。少なくとも好事家の言う様な儚げなだけの存在では無い事は判った
様な気がします。   (2003.9.6)