バンドーに訊け!
/坂東齢人(ばんどう きじん) 実は 馳星周

文春文庫  2002.6.10初版

字余りフォーク風でありながらこんなに面白い書評がある事を
見落としていたのは不覚(汗)葡萄瓜の不勉強が如実に現われる一瞬です。
恥ずかしながら馳さんの小説家としての文章は今だに読んでません。
舞台上で演技された記録ならこの読書録の過去ログで紹介した文士劇の
記録で拝見したのですが。……書評でここまで美味しいなら、小説の味は…。
ツボがかなりきっちりと押さえられた書評です。小説と読むとより一層
美味しい、のかも。  (2003.4.2)

孔雀狂想曲/北森鴻

集英社  2001.10.30初版

この方は余程骨董に縁があるんだろうか、と思いたくなる舞台設定です。
確かに骨董品と言うのは見慣れるとかなり面白い。御宝感とかと言うのは
後から不意に感じるもので、物に呼ばれると言う感覚が実際にあるのですよ。
葡萄瓜も呼ばれましたが財布の都合で幾度縁をご破算にした事か。
物言わぬ存在の語りに耳を傾ける…これは自ジャンルにも共通する点ですが、
そう言う感覚が葡萄瓜は好きなのでしょう。
短編集ですが、万が一ドラマ化するなら1篇につき2時間はかけて戴きたいです。
この1冊を2時間で駆け抜けるのは、余りに勿体無いから。
                        (2003.4.2)

触身仏 蓮丈那智フィールドファイル2/北森鴻

新潮エンターテインメント倶楽部SS  2002.8.30初版

この方の手腕にはいつもながら天晴れと言う以外無いです。
民俗学を成立させつつもここまでミステリに仕立て上げる…
いい時代の読者になれたものです。
ドラマ仕立てにすると多分魅力は相当削ぎ落とされそうな気がします。
ページを捲りつつハラハラしておくのが一番正しい楽しみ方なのでしょう。
文章だけで鬼気迫る場面もありますし。   (2003.4.8)

日本のおかま第一号/野地秩嘉

メディアファクトリー  1999.3.25初版

表題の傾向から萌えの部に入れるつもりでしたが、仕事への誇りと
言う部分を鑑みてこちらで。実際、職業と言う面が前面に出てましたし。
葡萄瓜も、胸に手を当てて仕事について考えました。
答えは静かに帰ってきましたが。   (2003.4.12)

あしたはワタシのお葬式/まついなつき

NHK出版  2002.4.20初版

遺言関係ではなく、死んだ後の為の手順を纏めた本。
縁起でも無いと顔を顰める方も居るでしょうが、とりあえずご一読を。
一生に一度の体験に纏わる事なのですから。読んで損はまずないでしょう。
                     (2003.4.12)

狐罠/北森鴻

講談社  1997.5.25初版

骨董と古書の共通点は、魔物が介在すると言う事です。
しかもこの魔物、物に棲み付いているのではなく心に棲み付いていて
何時でも人の手を引ける様に手薬煉しているのだから厄介なもの。
此度はその魅力以上に生臭が勝った様で少し読みが辛くなりますが。
それを差し引いてもかなり宜しい味わいか、と。  (2003.4.12)

あたりまえのこと/倉橋由美子

朝日新聞社  2001.11.1初版

殆ど遺言的なエッセイ集。只一節を紹介したいが為に取り上げました。
この書を取られたならば190頁の「恋愛小説」から194頁の「自慰行為と
しての小説書き」をご参照下さい。読んでいて少し赤面してしまいました。
その他に参照になる所も多々ありましょう。  (2003.4.20)

ソドムの百二十日/サド,マルキ・ド:著、佐藤晴夫:訳

青土社  2002.8.20初版

本邦唯一の全文訳らしいです。が…抄訳で良いから澁澤龍彦氏訳『だけ』
読んでいた方が良かったかも知れません。
訳が云々と言う以前に内容が…年齢制限の印は付けましたが頁区分から
お察しの様に萌えとは程遠いです。事例の参考には多少なるでしょうが。
はっきり言ってしまえば、男性向けの極めて出来の悪いドリーム小説としか
読めないのですよ。四三八頁出来の悪いドリーム小説を読まされた日には、
もうウンザリ以前の問題でして(苦笑)
ましてや装丁がA5判ハードカバーだから余計に腹立たしい。
ついでに言うと澁澤氏の訳文と比べ訳文が余りにも下卑ている。
更に止め。訳者氏の新版後書で思い切り毒気を抜かれました。
なるべくならばこの訳文は、象牙の塔の奥深くにしっかりと封印して
戴きたいものです。下々の者は澁澤龍彦氏の抄訳で満足しております故。
                        (2003.4.23)

聖杯伝説/篠田真由美

徳間デュアル文庫  2001.10.31初版

正しく、古き良き科学空想御伽噺です。
葡萄瓜がSFの事を申し上げるなど恐れ多い話なのですが、
どうもここ暫らくのSFと言うのは空想を御伽に消化出来ていなかった
様な気がします。ガチガチのリアリズムもどきか一足飛びに宗教風に
飛んでしまうかの二者択一。ワクワクしながら読めるSF…(遠い目)
科学と空想を結びつけるものが、この物語の中にはあると思うのですよ。
                      (2003.4.23)

演声人語 ベテラン声優が語る役者人生
/青野武・小原乃梨子・納谷悟朗・広川太一郎他15名談話、
イラスト:山口勝平、解説:大沼弘幸

ソニーマガジンズ  2000.6.12初版

声優さん=マルチタレントみたいな扱いをされだして久しいですが、
声優さん=役者さんと言う認識は残念ながら余り根付いて無いようで。

似た様な声の連続は、観る側も飽きております。
お願いですから声でも役者であって下さい、とこの本を読んで
つい祈ってしまいました。  (2003.5.27)