世の中には箆棒な本ばかり出すお人も居るもので御座います。
…などと講釈士の口真似をついついしてしまいます京極さんの
この一冊。本の中身も豆腐なら形も豆腐にさも似たり。なんとも
味わい深き一冊であります。
大体が豆腐や大根には薬味や何ぞで味付けをして食してしまうのが
常と言うものですが、これは豆腐や大根が薬味の味に逆らわず、
薬味の味わいを生かすからこその事。豆腐や大根にも元の豊かな
味わいはしっかり御座います。ただその味わいに思い至る事が
平生から忘れられているだけのお話で。
薀蓄として読むか講談として思い三味線を爪弾きつつ読み流すか、
それは好き好きで御座いましょう。筆者の場合、講談としてのリズムを
掴んでから実に気持ち良く読み流させて戴きましたが。
(2004.6.21)
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