饒舌な語り口の中に織り込まれた皮肉と愛情。それを受け止められるだけの 男性が現存するかは甚だ疑問ですが(斯く言う筆者はただ畏まって拝聴する のみです)、少なくとも頭のマッサージをする意味で一読するのは得策でしょう。 徒らにマッチョになる為の本では有りません。先天的に存在する男らしさを 再び育み直すための書と思っておいて良いでしょう。 (2004.3.26)
近代男性史に分類されるであろう一冊ですが、『男性同盟』なる集団に ついての描写に至ると、少々ホモセクシュアル議論とだぶる部分が出て 来るかも知れません。 現実を語る際にはどんな資料も読んでおかねばならないのだなぁ、と 骨身に沁みて思える一冊です。 (2004.3.27)
フェミニズムと言うタイトルから暫し及び腰な読み初めではありました。 フェミニズムと言うと情けない男を叱り飛ばす学問と言う先入観がまだ 残っていたからかも知れません。しかし、読み出すとこれが又予想以上に さくさくと読み進められます。 何でかなと思ったら、性の柵を見つめつつも筆者自身は性の柵から自由 みたいなのですね。其れは、批評者という立場からすれば非常に羨ましい 特質なのかも知れません。性の柵に縛られている批評者を同性に多く 見ている様な感を覚えるだけに。 (2004.4.7)
多分読んでいる葡萄瓜が浅学な故にでしょうが、歴史の単元以外はかなり 難解で参照しようにも時間が掛かると言う事しか判りませんでした。 歴史の部分でギリシャの社会制度の同性愛としてさらりと流しつつも鋭い 指摘が記述されていたのは興味深い所です。また、古代エジプトでも 少年愛の禁忌はあったと示唆する部分もあり、読み解ける部分だけでも 貴重な参考書にはなりましょう。 (2004.4.7)
オタクから俗を除いてアカデミズムを注入したとて、学問にはなりません。 アカデミズムオタクという奇妙なカテゴリーが出来るだけの話です。 ……本当に近視眼的にしかデータを取捨選択できなかったんですね。 それとも、自分の学説に合わないものは論じないと言う大人の姿勢ですか? この本に共感できるのは、恐らく東氏と感性が8割は同じ人で無いと無理では ないかと愚考します。筆者ですか?同意できない2割の一人でしょう、多分。 (2004.4.14)
変則的に、とは言え続き物ですので一緒に紹介をば。 『NATURAL』の番外編として成立した作品が結果次の作品に なったという形式です。 お題は『能』。何とはなしに能の世界には興味を持っていたのですが (筋書きもそうですが大道具小道具にも)、これで又一層身近になった 気が致しますね。とりあえず、きっかけとして読んでみるのに興深い 作品では?と思います。 (2004.4.17)
能鑑賞パンフレットにかかれた一文を集め全面改稿したものである との事です。こう言っては何ですが、改稿前のものも出版して戴きたい 気が致します。読み物としてはこちらで、そして、観賞用としては 改稿前の一冊を携えて。 舞台鑑賞の為の文章が粗筋だけなんて、余りにも空しすぎます。 判ったつもりで舞台をみるのではなく、舞台に驚嘆し胸躍らせた後で パンフレットを読み返し、ああそうだったのかと合点する…其れも又 文章の効能ではありますまいか。 (2004.4.17)
ストンストンと合点の行く考察であります。そう。悲劇について ちゃんと考える人ってのは(筆者の検索怠慢かも知れませんが) 多分いなかったと思います。その点でも快挙ですし、何より読み易い。 文字はみっしり論理もみっしり、其れでいて読み易いというのは、 マンガに触れマンガを愛した人だからこそでしょう。 ここが多分、マンガ読みの素人と玄人の境界線なのかも知れません。 (2004.4.17)
痛快で、やがて哀しさを感じるというやおい人の気持ちと その痛快さを書けずに寂しく嫉妬すると言う男の感覚を味 あわさせて戴きました。 男が男の立場でオタク論を語る事が出来る根拠は、結局自 分自身が男だと言う事に胡座をかいてるからなんだろうな、 と言う事を冷静に提示してる一冊とも感じました。 男の敵はオトコだと気付けない事は多分幸せなのでしょう。 安寧で居たい人に、苦行は敢えて強いますまい。 (2004.4.26)
読了し終えた瞬間、はしたなくも筆者はうめいていました。 『畜生。なんばん古書街がなくなる前に一度泊り込んででも 本を見尽くしておくべきだった』 この一冊にはそういう『本を買うのが好きな人間』の血を 沸き立たせるのに充分な効能があります。 自分が本を買う事に対してどんなスタンスを取る人間かと 充分自覚なさってからお読みになった方が良いでしょう。 下手に就寝前の一冊に選ぶと、起き上がった途端に本屋へ 行く準備をしている恐れもあると思いますので。 (2004.5.4)