レタリング日本字・英字/河原英介

ビジネス社  1984.8.1初版

書体見本の記憶がありありと蘇ってくる。
レタリングって、最近はPCフォントに取って代わられてるんでしょうねぇ。
筆記体のフォントなんて結構出てきてしまってますしねぇ。
懐古主義じゃ無いですが、書体の見本帳の厚みが妙に懐かしくなって
しまうのですよ。モリサワのカタログは、健在でしょうか?
                      (2003.2.4)

謎亭論処 匠千暁の事件簿/西澤保彦

ノンノヴェル  2001.4.10初版

タイトルには敢えて仮名を振らずに紹介します。
言葉遊びでお楽しみ下さい(笑)内容も実に小気味よく進んで行きます。
ただし、一つだけ贅沢を言うならば、謎を解いた後の蛇足が欲しい所です。
短編集だから仕方ないのでしょうが、何となく数式だけを説いて終わり、
と言う感じで座りが何となく悪いのです。(2003.2.4)

アンナの工場観光/荻野アンナ

共同通信社  1995.12.18初版

物が作られる過程を観光する…実はこれは大変面白いものなのです。
貴方にも覚えはありませんか?伝統工芸品(蒔絵や蜻蛉玉等)が作られる過程の
一部始終をみてワクワクした事が。これは正しくそんなノリなんです。
ただですね……扱ってるものが工業製品…お札やマネキンとかワープロとか
…って言うだけで。因みに葡萄瓜は、この本で『ぬれせん』『なません』の
存在を知りました。
『観光』の度に増える荷物…それらが物語るものは、面白くてやがて更に
面白き人間の心の襞かも知れません。  (2003.2.9)

萬月療法/花村萬月

双葉社  1999.9.5初版

小説とはうって変わった軽やかさに同一人物かと言う疑念をつい挟んで
しまいそうになりますが(笑)、下品な軽やかさで無いので本人確認が
出来ると言う感じです。おもろうてやがて哀しき乾いたエッセイを読ませて
戴いて感謝してもし足りません。
この人の凄い所はエッセイを書きながら成長を続けてる所なんですね。
雀百まで、ですか。座布団千枚奉りたくなります。
プロの軽口極まれり、でしょうか。  (2003.2.9)

アイヌ民譚集/知里真志保:編訳

岩波文庫  1981.7.16初版

北海道に元々住んでいた人々の民話より、本州で言う処の
『正直爺さん性悪爺さん』にあたる話を集め、日本語訳した
ものと、蝦夷に住むと言うお化けの簡単な解説集です。
読んで行く内に思うのは、それらの話が日本の様に只勧善懲悪的
な行儀良さを漂わせるのではなく、どこかしら物悲しいユーモア
を漂わせている事です。マザーグースの哀愁が類似なのかも。
昔話=純朴と思い込んでいるお方にはお読み戴きたく。
ただし、グリム童話の深読みの様な恐ろしさは一切保障致しません(笑)
                     (2003.2.18)

東京開化えれきのからくり/草上仁

ハヤカワ文庫  1999.7.15初版

実在の過去の時間軸を物語に組み込む時には、凡そ3つの方法が
あると思うのです。
一つは時代背景に従って、物語もその時代風に変えて織り込む。
若しくは、『IF』を多用して実在の時間軸だけを拝借する。
はたまた、上の2つを割合を変えながら混ぜてゆく。
この小説は一番分類の様でありながら実は三番分類です。SF風味ですし。
筋書きは言いますまい。推理小説でもありますので、種明かしは
無粋過ぎます。鍵になる言葉を2つ3つ溢すに留めましょう。
文明開化・エジソン・江戸情緒。以上であります。  
                     (2003.2.19)

わが手に拳銃を/高村薫

講談社  1992.3.28初版

『李歐』の初期形だと言うことで、今回手にとりました。
一人の読み手として率直に言えば、李歐よりも後味はかなり悪いです。
物語自体の骨組みは好きな方です。じわじわと描かれてゆく物語に心躍りますし。
只、登場人物に心情移入できないのは戴けません。
葡萄瓜は、通行人の一人にすら心情移入できませんでした。
それが多分後味の悪さに繋がっているか、と思います。
夢中になって読める話であるだけに、残念です。 (2003.2.19)

わたしのえほん/いわさき・ちひろ

講談社  1973.11.28初版

恐らく、葡萄瓜が何の柵も無くて初めて『絵本を読みたい』と
思って購入した一冊です。
いわさきさんの絵は存じ上げてましたけど、関心なかったですし。
絵本、となっていますが実際は短いエッセイです。
絵柄とは少し離れた文体。でも、不思議と納得出来てしまうんですね。
眺める絵本ではありませんので、くれぐれもご留意を。
                      (2003.2.19)

未完成/古処誠二

講談社ノベルズ  2001.4.5初版

自衛隊を舞台にしたミステリ、ですが「自衛隊臭さ」が有りません。
そう。軍隊と言うものからイメージされる形式的な空々しさが
感じられないのです。人間臭さなら幾らでも感じ取る事は出来ますが。
この本を読んで自衛隊を見つめ直しましょう、何て事は言いません。
が、読まないと貴方は損をするかも知れませんね、とは思っておきます。
                       (2003.2.19)

本棚探偵の冒険/喜国雅彦

双葉社  2001.12.10初版

本棚には、空腹の悪魔が棲んでいるのですよ。
そしてその悪魔は、本が1冊並ぶ度に芋蔓式に次の本を手繰り寄せるのです。
そして懐からは漱石さんが次々と消えてゆく…(涙)
然し、止められないんですねぇ。本棚を埋める本を見る安らぎの誘惑の前には、
後悔なぞ朝露の如しです(苦笑)業だと思って素直に煩悩に従わねば。

と、この本を読みつつ回想し、尚且つ腹の底から溢れる笑いに
のた打ち回っておりました。書痴にはお薦めしたき一冊です。
実用面でもかなり役立つのでは無いか、と囁いておきます。
                     (2003.2.19)