ぼくらの愛した二十面相 文士劇全記録/日本推理作家協会・編

光文社  1998.1.30

1997年9月27日に行われた『文士劇』の全記録です。
協会50周年と言うことで彼の江戸川乱歩氏に捧げると言う意味合いだとの事。
……出演の皆様、それを口実に思い切り愉しまれたご様子ですね。
ストレス発散を通り過ぎて只管はじけ倒してると言う気が致します。
殊に新本格の皆様+某妖怪作家様(笑)脚本の辻真先さんのツッコミを
信ずるならば記録の七割はアドリブになるような気が…。
これもそれも、ミステリが生んだ一夜の夢、なのでしょう。(2003.1.29)

アフタヌーン・ティーの楽しみ 英国紅茶の文化史/出口保夫

丸善ライブラリー  2000.10.20初版

改めて「紅茶もお茶の一種なんだ」と思わせてくれる一冊。
確かに作法に煩い一面もありますけど、そこはそれ。日本のお茶にも
茶道が在る様に紅茶にも作法が存在する、と言うだけの話です。
(余談ですが韓国にも茶道はあります。煎茶作法とでも言うんでしょうか)
この本では英国紅茶の素顔を見る事ができると思います。
ティーバッグの使い方一つでも、上手に使って本格仕様。
番茶感覚で、紅茶を愉しみませんか?     (2003.1.29)

たばこの謎を解く/コネスール:編著

河出書房新社  2001.12.20初版

たばこの歴史を文化と言う側面から平易に纏めた一冊。
まあ、編著の集団はJTの関連団体ですから資料については豊富ですし。
但し中身はJT一辺倒…では無いと思う。辛うじて。
某犯罪学者愛煙銘柄のエピソードも盛り込んであると言うのが、
葡萄瓜的にポイントが高いかも。その薀蓄をあの口からお聴きしたいものです。
                           (2003.1.29)      

工学部・水柿助教授の日常/森博嗣

幻冬舎  2001.1.10初版

虚々実々とは正にこの事かと思われます。
何処とは無しにエッセイ風であり、苦し紛れの小説風でも在り、
でもオチまでいくと実話風小説とも思える。その実態は不明です。
で、理系的話題が結構ふんだんに織り込まれている訳なんですが、
これが耳障りなく実にストンストンと通ってゆく。
推理の様な日常、日常の様な水理。日々是淡々と過ぎ行くものです。
                         (2003.1.29)

百鬼解読 妖怪の正体とは?/多田克己

講談社ノベルズ  1999.11.10初版

馬鹿をやるにも薀蓄は要る。一つの馬鹿には百の薀蓄。
その薀蓄の行き着く先は、道楽馬鹿と相成り候。
と、言う訳で妖怪馬鹿のお一人による妖怪解説書であります。
挿画は京極堂こと京極夏彦さん…器用なお方です。絵も端麗。
いっそ二代目水木しげるをお継ぎになって戴きたい程に。
骨のある内容に関わらず、ぐいぐいと読めます。
妖怪の参考書の一冊としてお持ち戴くが宜しいか、と。 (2003.1.29)

篠田真由美の秘密の本棚 エッセイと建築探偵番外編

SCORPION(私家版)  2003.1.31再版  限定部数

篠田真由美と言う作家さんを誤解曲解している人にこそ、是非本書を読んで
戴きたいですね。本当はもう少し強い気持ちなんですが。
エッセイ部分だけでも小さな版で商業出版に廻して戴きたい程です。
何かのシリーズのおまけ…は考えたくないですね。ちゃんとお金を出して
購うべき内容だと思いますから。建築探偵番外編は読者への贈り物的認識で
捉えてますし。
エッセイの内容は、硬質だとだけ申し上げておきます。これだけでも認識の
再確認には充分でしょうから。   (2003.1.30)

未明の家 建築探偵桜井京介の事件簿/篠田真由美

講談社文庫  2000.1.15初版

紹介としては1994年9月初版の同社ノベルズ版を紹介すべきなのかも
知れません。が、読んで戴くならば、と考えると改稿されているこちらを
推すべきでは無いかと。
もしも推理小説に心理描写は必要なく、只推理と言うシステムだけを描けば
それで良いと認識されている方がいるなら、本書を読んで下さいと葡萄瓜は
言うでしょう。システムを構築しているのは人間なのですから。
其の証拠に、この登場人物達はシリーズを重ねると同時に齢を重ねます。
それは、このシリーズにとっては必然なのでしょう。  (2003.1.30)

飛行船の上のシンセサイザー弾き/難波弘之

ハヤカワ文庫  1985.11.15初版

キーボード奏者として知られている御仁のSF短編集です。
ところが、これがちっとも余芸なんかでは無い。
むしろこっち(SF作家)が本業だと思うような出来…と思ったら、
第4回安倍能成文学賞受賞の経歴あり、との事。
単にSFとしての枠組みに留まらず、内面にきちんと踏み込んで
くる感覚には舌を巻きます。諧謔もケレン味もたっぷりあるし。
経歴を見て誰かを連想したとしても、それは貴方の気の所為です(苦笑)
                      (2003.2.1)

まざあ・ぐうす/北原白秋:訳

角川文庫  1976.5.30初版

世間で流布しているマザー・グースの多くは恐らく谷川俊太郎氏訳、
若しくは和田誠氏訳、或いは其の類型だと思います。
そこで描かれる訳の世界は確かに異国情緒を伝えてはくれますが、
なにか今一つ物足りない時がある。淡々としすぎた感があるのです。
其の時にふっと光るのがこの訳です。初出は大正十年刊行との事。
かなり泥臭い訳ではあります。が、スズキ・コージ氏の挿絵との相乗効果で
童謡の中に潜む暗闇まで垣間見える、と言っては言い過ぎでしょうか?
流石にミステリの中にこの訳を引用するのは躊躇われると思いますが(苦笑)
                        (2003.2.1)

香りの手帖/香老舗 松榮堂広報室:編

福武文庫  1991.10.16初版

香りの起源から文化史・雑話・科学・作法を網羅した一冊です。
世界から始まり、やがて日本へと焦点が少しずつ絞られて行きます。
香りと言うのは姿が無い分一筋縄では行かない相手なのですね。
一つの香りが加わるだけで物語に奥行きが生まれる事もある…
香りだけで人間を描けてしまう場合もあると言う事ですから、凄いものです。
図版はありませんが、それを補って余りある記述に溢れていますのでご安心を。
                          (2003.2.1)