新版 お母さんのおチンチン育て/五味常明

青樹社  1999.10.10初版

読んでいる内にどんどん妙な気分になってきました(苦笑)
本当にこの本は育児書なんだろうか?と思い返しましたもの。
通奏低音の様に感じる『父親の存在の誇示』と『過剰な性教育の実践』。
ここまで解説しないと読者は判らないだろう、と言う姿勢に
妙に白けた気分になりました。
寧ろこれは『父親代理による母親教育の本』にしか思えません。
男の子のメカニズム理解の為には判り易いとは思いますけど。
                    (2003.2.19)

美少年尽くし/佐伯順子

平凡社  1992.9.21初版

書名も柔らかく、装丁も若草色で如何にも…な内容に思われましょうが、
侮ってはなりませぬ。解かれている内容は江戸時代の若衆解説の鮮やかな註釈。
文章に溺れる事無く淡々と且つ骨太に『美少年』を軽やかに論じています。
(確かに『太陽』誌上で連載していたのですからそうですわねぇ)
参考書、なんて気張らずにお読みになって下さいまし。
                    (2003.2.22)

美少年日本史/須永朝彦

国書刊行会  2002.2.22初版

丁寧な話し言葉で綴られた一冊(後書を見れば窮余の一策で口述筆記の形を
とったとの事)ですが、内容は結構際どい部分まで及んでいます。
美少年とて突き詰めれば人間。表もあれば裏もあり、その絡み合いで又美が
際立つといった所でしょうか。引用資料も豊富です。
時代としては古事記に記された時代から平成(と言っても極初期)までの
広範囲。満遍なくカバーされてると思います。
創作の世界の資料になるかどうかは、読んだ方次第、でしょう。
                   (2003.2.22)

恋人たちの森 森茉莉・ロマンとエッセー ロマンU
/森茉莉

新潮社  1982.6.5初版

一昔前は耽美の代名詞としてこの方の作品が挙げられていた、
と耳に挟んだ記憶があります。
確かに耽美ではあります。それも、年長者の美意識押し付けの。
この世界では受動者の美意識はすっかり保護者である能動者の
それに塗り替えられるのが至上なのでしょう、と葡萄瓜は読みました。
嫌いでは無い世界です。が、気軽に踏み込む世界でもないのでしょう。
この方のエッセイを読む為の勇気が欲しいです(苦笑)
                  (2003.2.23)

追記
 耽美作品群、文庫になっていたのを忘れていました。
 *『恋人たちの森』 新潮文庫/1975.4.30初版
 検索の一助にどうぞ。  (2003.3.6) 

同性愛 書物の王国10/小栗虫太郎他

国書刊行会  1999.3.24初版

古今東西の『同性愛文学』短篇を集めたアンソロジーです。
日本からは小栗虫太郎氏の他にも幾人か。司馬遼太郎氏の
映画化作品も収録されております。
同性間の愛情、とは果たして異常なのでしょうか?
否定できる明確な理由は確かにあるのでしょうが、それで納得
しないのが人間と言うもの。こうしてアンソロジーが編まれるのも、
何かの示唆かと思われます。  (2003.2.23)

ゲイ・スタディーズ
/ヴィンセント,キース・風間孝・川口和也

青土社  1997.6.15初版

この本を読んで、暫し考え込んでしまいました。
ネットが盛んになって同性愛理解の輪が広がった様に個人的には思ったのですが、
それはやおい的に変換された「同性愛」を理解したって事じゃ無いのか、と。
同性愛で検索をしても、引っ掛かるのは扇情的で閉じた世界で綴られる物語や
映像の数々。そして好みを巡る湿り気ある対立。現実の同性愛がフィクションで
あるやおいに侵食されてる様な、妙な感覚を覚えています。
本当に同性愛の事について知識を得たいと思い立ったら図書館に直行して書庫から
本を掘り出さないと参考文献すら探し出せないと言う状況(葡萄瓜の視野が狭いの
かも知れませんが)は誰が作り出したものやら。
……知ったかぶりで立ち止まるのは、本当に止めましょう。
                    (2003.3.1)

YES・YES・YES/比留間久夫

河出書房新社  1989.12.10初版

思い返せばこの小説は衝撃的でした。
ゲイバーに働いている売り専の少年からの視点もそうでしょうし、
性行為が淡々と綴られて居る事にも。扱いも扇情的だったと思います。
売れ行きに関しては1年間で11版重ねたと言う事で推測して戴けましょう。
肉体的な蠢きを描く中でふと覗く登場人物達の乾いた呟き。
何かと引き換えでないと、人間は存在できないものでしょうか。
設定はゲイ的と言うよりはやおい感が強いのでは、と葡萄瓜は感じました。
                    (2003.3.2)

月光のイドラ/野阿梓

中央公論社  1993.2.20初版

一読して余りの耽美振りに、著者が男性である事を忘れそうになりました。
これ以前の作品は耽美の欠片もなかった様に記憶しているのですが…いや、
プロの力は恐ろしい。いまやこの方の作品に耽美は欠かせない要素になりました。
筋書きはミステリ的側面が強いので敢えて伏せます。
深い愛に耽りながら美を忘れず、どこか冷静に相手を気遣う。
少年達の織り成す深い愛の世界に耽って時間を過ごすのも悪くはありますまい。
この続編もまた、いずれご紹介を。  (2003.3.2)

編集長「秘話」/伊藤文学

文春ネスコ  2001.12.24初版

創刊時から「薔薇族」の編集長兼発行人を勤めてこられた方の零した
「秘話」です。実に参考になりました。
秘話の中から浮ぶ実際の同性愛世界の明暗。労わりあいの半面で時に
「同志」を食い物にする人々。其処に哀しみもあると思うのは外部の
勝手な感想でしょうか?
同性愛は当たり前の事、と思われるなら読まれた方が良いでしょう。
いえ、読んで知っておくべき事は多いと思います。
                  (2003.3.2)

緑色研究【上下】/野阿梓

中央公論社  1993.11.7初版(上下とも)

『月光のイドラ』の続編的作品。と同時に確かシリーズの完結編ですね。
基本的な美意識は多分同じです。寧ろ衆道的精神は強まっていると思います。
その所為もあってか、流して読むと短絡的に武士道精神の発露に思えて
しまいますが、この方の作風を考えると納得する面もあります。
愛を交わす場面は、前作にも増して濃厚で美しく、そして淫ら。
皮一枚のバランスで、耽美のイメージを崩さずに輝いています。
                       (2003.3.6)