確か今を去る事十五、六年前。この本のハードカヴァー版を
大阪府立中之島図書館で読んだ、様な記憶があります。
正直、度肝を抜かれた。まだやおいのやの字も知らず、同人の
識別すらつかない頃の話です。この文庫版で『再会』した時も心中は
決して穏やかではなかったですね。同性父子相姦をしっかり描いていたから。
が、それだけの感慨しか再会後は抱けなかったです。正直、萌えません。
その要因の一つには登場人物達の自意識の余りの過剰さ。
そしてもう一つは余りにも自己完結的な展開でしょう。
同性愛及び父子相姦を出汁にして哲学を説かれ、尚且つそれが読む側に
伝わる前に作者の中で自己完結している…作者存命ならば許可を取り、
やおいの手法で何方かにリライトして欲しい歯痒さが今でも残ります。
(2003.2.5)
追記
改めて現物を手元にする事が出来たのでデータ等追加します。
『禁断叢書』シリーズ3として発行。親本は1988年9月に河出書房新社から
発行されていたとの事。記憶の確認として後は中之島図書館(若しくは
大阪府立図書館)の蔵書に同書が存在するや否やでしょう。
そして文体から受けていた大きな錯覚。戦後の性雑誌全盛時代の作品だと
ばかり思っていましたが、親本発刊当時の作家が匿名で書いたものだった
そうです(カバー袖にも明記)。
カバーに使われている絵は『ヒュアキントスの死』。
表紙には『当代一級の作家による匿名ポルノグラフィー』の文字が
躍っています。 (2003.4.15追記)
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