本屋でOh My God! ショートアイズ奇譚
(2003.4.16)

 「もうし、元織さんいらっしゃいまっか」
 「はーい、少々お待ちを…てご隠居さん、どないしはりました
ん?」
 「ああ奥さん、いつもえらい別嬪さんで。ご主人は居てはりま
すかいな」
 「ああ、うちのんに何か用ですのん。一寸お待ち下さいな」
 奥へ引っ込む奥方。そして水屋を引っくり返した様な音が響き
ます。
 「これはご隠居さん、よういらっしゃいました。えらい珍しい
事で」
 「何や私が外に出るんがえらい珍しい様ですな」
 「いやいや、仕事場ではようよう姿はお見かけするが他の場所
ではとんとお見かけせんから」
 「実は今日はお前様を見込んで一つ教えて欲しい事があります
んや」
 「ご隠居さんに私がお教えできる事…女房の尻にひかれるコツ
でっか?」
 「そんなんやのうて一寸調べ物に詰っておるんです。ショート
アイズ言うたらどう言う言葉かとこの間からえらい気にかかりま
してな」
 「あ、そら簡単ですわ」
 「打てば響きますなぁ。すんません。教えとくんなはれ」
 「戯曲。演劇の台本の名前ですわ」
 「何時頃の?」
 「1975年やから…元号で言うたら25引いて昭和50年ですな」
 「結構古いもんでんな。アメリカの話でっか?」
 「ええそうです。昭和52年に映画化もされてますわ」
 「あちらさんの芝居やったら日本で時々やったりしますわな?
これもやりましたか」
 「勿論。昭和57年に文学座がやってた筈ですわ」
 「それでやな。この言葉に意味はありますんか?」
 「そら有りますがな。只、辞書には載せ難い言葉みたいですけ
どな」
 「ほうほう。忌み言葉でっか?」
 「似た様なもんでしょうな。刑務所ん中の隠語ですわ」
 「そらまた。で?」
 「子供相手の性犯罪やとか子供相手の痴漢と言う意味合いらし
いですな。あと児童暴行犯と言う意味合いも有るらしい」
 「子供全般なんですな?男の子限定やのうて」
 「その様ですなぁ。何ぞありましたか?」
 「いや、実は斯く斯く然々で」
 「ご隠居さん。小噺スタイルでリンク貼るのんは掟破り違いま
すか?」
 「この方がよろし。文字で読んでもろた方がまだ説得力ありま
すわ」
 「さよか。それにしてもえらい又曖昧模糊とした話で」
 「そもそも舞台や映画の言葉が何で同人界に引っ張っていかれ
たのか言うんがなぁ」
 「それに男の子限定ですわな。ロリータ言う言葉もあるんにけ
ったいな」
 「時にあんさん、夏目房之介さん言う方ご存知かな?」
 「ご存知も何も、その血縁の方に私等大層お世話になってます
がな」
 「そら知らなんだ。何処ででしたかな?」
 「ここですがな」
 「えらい薄い札入れやな」
 「ほっときなはれ!で、取り出だしましたる一枚の千円札」
 「大漱石の血縁と言うんやおませんやろな」
 「実はお孫さんですわ」
 「そないなお人かいな。で、その人がショートアイズについて
解説してると言うんですがあんさん覚えてまっか?」
 「いや、私の読んだ本の内では触れてはりませんな。…あの頃
漫画は思春期だった(ちくま文庫/2000.9.6)、漫画と戦争(講
談社現代新書/1997.12.20)、マンガの力(晶文社/1999.8.5)、
TV大語解(小学館/1998.5.1)笑う長嶋(太田出版/1998.10.18)、
と…。この辺にはおませんな」
 「まだ出て来る可能性もある、と」
 「本当に言うてはったら、ですな」
 「そうですなぁ…ところであんさん、オチは耳打ちされてまっ
か?」
 「私は何も。ご隠居さんは?」
 「さてはオチを考える間も無く書きよったな、あのクソガキ」
 「いや、何や私との打ち合わせ中そわそわしてましたな?」
 「ほほう?」
 「招待状が見つからん言うて」
 「招待状…しょうたいじょう…しょーとぁいじょう…しょーと
あいじょう…」
 「ショートアイズ、ですかいな」 
 はらほろひれはれはらほろひれはれ。

 *追記
  事典に書くだけで飽き足らずつい小噺をでっち上げて
  しまったが、本当にこの問題については首を傾げるば
  かりだ。
  思えばこの語があったからやおい事典を作ろうと思い
  立った訳でもあるが。
  この追記では夏目房之介氏の著作内での確認を報告し
  ていこうと思う。
   「手恷。虫の冒険」(小学館文庫/98.7.1)
   「これから」(講談社/00.12.8)
   「読書学」(潮出版社/93.7.15)
   「消えた魔球」(双葉社/91.8.10)
   「手塚治虫はどこにいる」(筑摩書房/92.6.30)
  以上確認終了。該当無し。【2003.4.17】

   「夏目房之介の講座」(ちくま文庫/97.4.24)
   「古典教養そこつ講座」(文藝春秋/94.5.25)
   「人生の達人」(小学館/95.1.10)
   「新編學問 虎の巻」(新潮社/92.10.10)
   「新編學問 龍の巻」(新潮社/94.6.20)
  以上確認したが該当無し【2003.4.18追記】

  「マンガはなぜ面白いのか」(NHKライブラリー/97.11.20)
  確認したが該当無し【2003.4.20追記】

  「あっぱれな人々」(小学館/01.8.10)
  確認するも該当無し【2003.4.26追記】

  「不肖の孫」(筑摩書房/96.10.25)
  確認するも該当無し【2003.5.13追記】