たまには真面目に・弐〜同人古書の価値〜

先日、古書店でショタ同人誌が大量に投売りされていました。
ええ、一山幾らと言う扱いです。
その店では普通の同人誌もその様な扱いを受けているので、
その光景を見た時も「ああ、体裁だけ見てとりあえず値付け
しているな」と思ったものです。
さて、もしもこれらの本がネットオークションに流れたとし
ます。如何な価格がつく事でしょうか?
…自分で振った話ですが嫌な結果が出そうですね。相場無視
の高額取引か足下を見た更なる要求か。
例としてショタ同人誌を挙げましたが、これは如何なる(漫
画系)同人誌も同じ運命。相場設定の骨組みが出来ているだ
け文学・ミステリ系統同人誌がそう言う点では恵まれている
と言えましょう。

お宝ブームと言う訳の判らぬ風潮の手伝いもあってか世間
に浸透し尽くした感のあるネットオークション。正直言っ
て賛同しかねますね。
出品物が欲しくてオークションに参加している方もいらっ
しゃるのでしょうが、価格上昇の過程だけを楽しんでいる
としか思えない人が多い印象の方がまだ強いのですよ。
その中で同人誌の売買をする。そこに垣間見えるのは只の
売り手と買い手の顔。ジャンルや作品に対する愛情は、少
々感じ難いです。
ましてや高額取引を狙って転売行為を展開されたら…薄く
笑うしかないだろうなと思います。転売者はその行為で彼
等の金蔓と目している作家の創作意欲を殺ぎ落とし、発行
点数を減らす手伝いをして結果自分の懐をお寒くさせてい
るのです。そう言う行動が繰り返されればやがてジャンル
も衰退しましょう。彼等は、またどこか寄生先を探さざる
を得ない訳です。傍から見て実に虚しいですね。

敢えて言えば同人誌と言うのは一種の生鮮食品です。読み
手の萌えも又保存料の役割を果たしますので、読み手の萌
えが薄れた時点で既にその同人誌の鮮度は多少落ちている
と言えましょう。
それでも、新たな読み手の手に渡れば又鮮度は回復します。
が、理想的なのは最初の読み手さんの手元で鮮度と引き換
えに萌えの熟成が為される事です。その過程を経て初めて
古書同人誌は「お宝化」するのではないでしょうか。
転売されている同人誌は言わばフリーズドライ加工された
様なものです。湧き立った萌えを注がれれば鮮度は程無く
戻るでしょうが、寡聞にもそう言う好例を耳にした事はご
ざいません。
第一古書の価値と言うのは絶版という過程を経ないと生ま
れないのです。まだ市場に流通している本の価格がより上
の値に化けるなんて事は、電脳界の御伽噺に過ぎないので
すよ。初版限定と言う多少の例外はあってもね。

真面目な話をするつもりが、つい諧謔口調になってしまい
ました。
古書を取引される時には適正価格を見定めて戴けます様、
各位様に伏してお願い申し上げます。
                    (2003.8.27)