本屋でOh My God! やおいの書誌学
(2003.8.18)

 メールマガジン発行をきっかけにして資料収集に力を注いでおります。
 当然ネット上でも検索をする訳ですが、その際に出典が明記されてい
ない情報が多いなと感じてしまう訳です。例えばショタコン=ショート
アイズコンプレックス語源説ですとかやおいの語源ですとか。
 物事の起源を語ると言うのにその出典が明確にされず、流れている情
報の子引き孫引きで済ませてしまう…やおいの事を調べるのに時間をか
ける程の価値は無いと暗に仰られている様で些か愉快ではありません。
 でも一方でそう言うデータの流れが出来ても不思議では無い状況もあ
る訳です。やおいという分野に関していえば書誌目録の類が殆ど編まれ
ていないのですから。手探りを繰り返す内に面倒になると言う気持ちも
判らないでは無いですし。
 只そこで検索を放棄してデータの転載を繰り返しては却って逆効果な
のですね。転載に埋もれて肝心の初出が見えなくなる可能性が大いにあ
りますから。
 資料が楽に入手できる内はまだ訂正が利くのです。資料が手に入らな
くなってしまっては、間違った情報が流れても後の祭りです。資料入手
の手掛かりとしても出典明記は重要になるのですね。そして、廻り回っ
て出典明記があったからこそ情報の正当性が認められるという事もある
訳でして。

 資料を辿るのは実際そう大した苦労は要りません。葡萄瓜の経験した
一例を引いてお話させて戴きますと、『やおい』と言う言葉の初出を検
索→『らっぽり やおい特集号』と言う同人誌の存在を知る→その同人
誌が『小説JUNE』のバックナンバー上で復刻されているとの情報→現物
を当たると発案者と目される人のインタビュー記事が掲載されている
『JUNE』のバックナンバー発行日明記→更に現物確認という流れがあり
ました。
 大体ならば最初の段階で止まってしまう場合が多いのですね。まさか
同人誌が商業雑誌上で復刻されているとは露とも思われない人が多いで
しょうから。偶然とは言え第二段階の情報入手はその点有り難かったで
す。で、糸口さえ掴めてしまえば後は凄く辿り易いのです。
 対照的なのは並んで流布されている『やおい』の語源は手塚治虫御大
の著書の一文からという説でして…此方は出典の明記が一応されている
にも拘らず今だに真偽不明です。肝心の出典とされている書物の存在が
確認できないからです。この場合、せめて出版社名でも併記されていれ
ば辿りようもあったのかも知れません。
 今現在、個人的に追跡確認を試みてはいますが手塚御大の著書で該当
するものには巡り会って居りません。同じ様な例として夏目房之介氏が
『ショートアイズコンプレックス』について言及したという風説があり
ます。是も又現在折ある毎に確認はしておりますが、出典断定には至っ
ておりません。

 物事を深く知ると楽しみは増して来ます。それはやおいについても全
く等しく言える事です。
 当サイトがその知識欲を深めるお手伝いを出来たというのなら、それ
はとても光栄な事であります。書誌とはお世辞にも言い難い当サイトで
すが、せめて糸口探しのお手伝いが出来る様、精進して参ります。